脚本の技術10分で読めます

脚本テクニック15選:どのページも面白くする書き方

遅れて入る、サブテキスト、ミッドポイント、マッチカットなど15の脚本テクニックを、同じパン屋のシーンの書き直しで実演。各テクニックの詳しいガイドへのリンク付き。

夜明け前のパン屋で撮影する小さなクルー。粉まみれのエプロンの女優がステンレスの台に立ち、ずぶ濡れの男優がブームマイクの下で戸口に立つ映画的な一枚

結論から言うと: 脚本テクニックとは、ページを速く読ませ、画面でよく効かせるための、小さく繰り返し使える判断のことです。シーンをどこから始めるか、登場人物が何を口に出さないか、どの画が転換を担うか。この記事ではそのうち15個を規模ごとにまとめ、短い定義、実例、詳しいガイドへのリンクを添えています。

まだ白紙のページを前にしているなら、アイデアから初稿までの脚本の書き方から始めてください。ここから先は、すでにシーンがあって、それをもっと働かせたい人向けです。

15のテクニック早見表

#テクニック効く規模直せる問題詳しいガイド
1遅れて入り、早く出るシーン遅い出だし、だらだら続く終わりシーンの入り方と出方
2前後の立場の変化シーン何も変わらないシーンビフォー・アフターのシーン
3余白とミクロのテンポシーン読み飛ばされる詰まったト書きミクロのテンポ
4サブテキストシーン何でも言ってしまうセリフ説明に聞こえないセリフ
5対立の中に説明を隠すシーン説明の垂れ流しプールの中の教皇
6声の書き分け脚本全体みんな同じ話し方の登場人物名前を隠して読むテスト
7発端となる出来事脚本全体いつまでも始まらない物語発端となる出来事
8ミッドポイント脚本全体たるむ第2幕ミッドポイントを極める
9伏線と回収脚本全体納得できない結末チェーホフの銃
10セリフのないシーンシーン画で済むところをしゃべらせるセリフのないシーンの書き方
11マッチカットシーン間平板なつなぎマッチカット
12プレラップシーン間勢いが止まる場面転換プレラップ
13欲求と必要脚本全体内面の賭けがない目標欲求と必要
14能動的な主人公脚本全体出来事に振り回されるだけの主人公受け身の主人公という落とし穴
15キャラクターアーク脚本全体始まりと同じ場所で終わる主人公キャラクターアーク入門

15の脚本テクニックを、シーン、シーン間、脚本全体という規模で3列に分け、それぞれを扱うScreenWeaverブログのガイドを並べた図(図は英語)
15のテクニックを効く規模ごとに並べ、それぞれのガイドを添えた図。作図:ScreenWeaver。

練習用のシーン

テクニックは実際のページの上で見るほうがわかりやすいので、以下の例はすべて同じシーンを使います。このガイドのために書いたもので、わざと下手に書いてあります。イネスは亡くなった父が遺したパン屋を営んでいます。弟のサミが、借金があるせいで夜明け前にやってきます。

INT. ローザのパン屋 - 夜

ドアの上のベルが鳴る。サミ(30代)、ずぶ濡れで入ってくる。

サミ
やあ、イネス。元気?

イネス(30代)、肘まで粉だらけ、生地から顔を上げる。

イネス
サミ!元気よ。朝の4時だけど。
何しに来たの?

サミ
頼みがあるんだ。カリムに6000ユーロ
借りてて、金曜までに返せって。

イネス
父さんが店を私に遺したこと、
まだ怒ってるんでしょ。

サミ
怒ってないよ。金、貸してくれる?

イネス
無理。さよなら、サミ。

サミ、出ていく。イネス、生地に戻る。

すべてわかりやすく、そして何ひとつ効いていません。

シーンのテクニック

1. 遅れて入り、早く出る

何かが変わる直前の、できるだけ遅い瞬間にシーンを始め、変化が着地したらすぐに切ります。あいさつ、世間話、別れの言葉が真っ先に削る行です。

このシーンにベルも「元気?」も退場もいりません。お金の話がもう始まっているところから入りましょう:

INT. ローザのパン屋 - 夜

イネス、パンの天板をオーブンに叩き込む。
その背後で、サミが磨いた床にしずくを垂らしている。

イネス
6000。金曜まで。

サミ
木曜なら5000でいいって。

イネス、オーブンの扉を閉める。振り向かない。

長さは半分以下で、読み手は口論の途中に入ります。ゆっくりした入り方を残す価値があるのはいつかも含め、詳しい方法はシーンの入り方と出方のガイドにあります。

パン屋のシーンのビフォー・アフター比較。左は元のページで、あいさつ、過去の説明、退場に取り消し線。右は書き直したページで、お金の話で始まりイネスが振り向かずに終わる(図は英語)
遅れて入り早く出る前と後の、同じパン屋のシーン。取り消し線は削った行。作図:ScreenWeaver。

2. 前後の立場の変化

シーンは、少なくとも1人の登場人物を、始まったときとは違う位置に置いて終わるべきです。いちばん強い見せ方は、説明のセリフなしに、目に見える前と後を示すことです。

サミに、父の時代から持っていた店の鍵を持たせましょう。彼はその鍵で入ってきます。出ていくときは、鍵をカウンターに置いていきます。誰も鍵に触れませんが、観客には彼が何かを手放したことが伝わります。ほかの例はビフォー・アフターのシーンへ。

3. 余白とミクロのテンポ

改行が読む速さを決めます。短いト書きは速く読め、カットのように効きます。6行の塊は読み手を遅くし、たいてい読み飛ばされます。

口論の最中にオーブンのタイマーが鳴ったら、それだけで1行にしましょう:

タイマーが鳴る。

どちらも動かない。

短い2行で、2拍の沈黙。ページを詩にしてしまわずにこれを使う方法は、ミクロのテンポのガイドにあります。

セリフのテクニック

4. サブテキスト

登場人物は大事なことを名指しせず、その周りを話します。観客は本当の話題を自分で読み取り、その小さな努力が観客を前のめりにさせます。

「父さんが店を私に遺したこと、まだ怒ってるんでしょ」は、サブテキストをそのまま言ってしまっています。こうしてみましょう:

サミ
父さんのパン種、まだ生きてる?

イネス
毎朝、継いでる。

セリフはパン種の話です。シーンは、誰が残ったかの話です。詳しい方法は説明に聞こえないセリフの書き方、ほかの例はサブテキストの技術をどうぞ。

5. 対立の中に説明を隠す

観客にある事実が必要なときは、何か別のものが注意を引いているあいだに渡します。古典的な名前は「プールの中の教皇」です。観客がもっと面白いものを見ているあいだに、情報が届きます。

借金の詳細は、サミがレジを開けようとし、イネスが引き出しを叩いて閉めるあいだに出せます。観客は揉み合いを見ながら、ついでに「6000」と「カリム」を受け取ります。見せ方のバリエーションはプールの中の教皇のガイドに。

6. 声の書き分け

ページの役名を隠してみてください。誰がしゃべっているかわからないなら、声はまだ分かれていません。

イネスは目の前の作業についての短い命令口調で話します。サミは値切り、数字で話します。「木曜なら5000でいいって」は彼にしか言えないセリフです。自分のシーンは名前を隠して読むテストで確かめましょう。

セリフを直したら、シーンをト書きとセリフの比率ツールに貼りつけてみてください。ページのうちト書きとセリフがそれぞれどれだけかを示すので、2人が向かい合ってセリフを読み合うだけになったシーンをすぐに見つけられます。

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構成のテクニック

7. 発端となる出来事

発端となる出来事とは、主人公の生活のバランスを崩し、対応を迫る出来事です。長編ではたいてい早い段階に置かれます。どこに、なぜ置くかは詳しいガイドで扱っています。

これがイネスの映画なら、サミの夜の訪問が発端です。朝4時の生地づくりという日常が断ち切られ、もう元どおりには戻れません。

8. ミッドポイント

ミッドポイントは脚本の真ん中、110ページの長編なら55ページあたりにあり、物語が何についての話なのか、あるいはその代償を変えます。第2幕が障害の羅列になるのを防ぎます。

イネスにとってのミッドポイントは、借金が店の名義で組まれていたと知ることかもしれません。それまでは弟を助けるかどうかを決めていた。そこからは店のために戦うことになります。筋を壊さずにミッドポイントを作る方法はミッドポイントのガイドで。

パン屋の物語を表示したScreenWeaverのScriptタブの再現。カードビューに幕、シークエンス、ストーリービート、シーンのカードが並び、ミッドポイントのビートが強調され、下の脚本エディターに書き直したシーンがある(画面は英語)
ScreenWeaverのScriptタブのカードビューに並べたパン屋の物語。発端とミッドポイントはストーリービートのカード。アプリの画面からの再現で、例文はこのガイドのために書いたもの。

9. 伏線と回収

最後に効くものはすべて、前もって、できれば観客があまり注目していないときに仕込んでおくべきです。仕込みのない回収はずるく見えますし、回収されない伏線も読み手は気づきます。

サミの鍵は伏線です。最終幕で、イネスはそれを彼に返すことができます。いくつも仕込むなら記録しておきましょう。簡単な方法はチェーホフの銃のガイドにあります。

ビジュアルのテクニック

10. セリフのないシーン

転換の中には、セリフがまったくないほうが効くものがあります。観客はふるまいを見て、意味を自分で読み取ります。

口論の翌朝、イネスは1人でパンを焼きます。習慣でコーヒーを2杯いれ、それから1杯を流しに捨てます。読み手がついてこられるような書き方はセリフのないシーンの書き方で解説しています。

11. マッチカット

マッチカットは、共通の形、動き、音で2つのシーンをつなぎ、編集そのものに意味を持たせます。ページ上ではMATCH CUT TO:というつなぎとして書き、控えめに使います。

イネス、拳で生地を押しつぶす。

MATCH CUT TO:

EXT. 駐車場 - 夜

拳がサミの車の窓を叩く。カリム。

このつなぎが役目を果たすのはどんなときかは、マッチカットのガイドで説明しています。

12. プレラップ

プレラップでは、次のシーンの音やセリフが、今のシーンが終わる前に始まります。観客をカットの向こうへ引っぱります。

イネスが最初のパンを棚に並べていると、姿より先にカリムの声が聞こえます。「木曜でいい」。そして駐車場へカット。書式はプレラップのつなぎを参照してください。

キャラクターのテクニック

13. 欲求と必要

登場人物が欲しいものは、画面で追いかける目標です。必要なものは、抵抗している変化です。物語はたいてい、その2つのどちらかを選ばせます。

イネスは、父が遺したままの店を守りたい。必要なのは、たとえ昔のままの店を失うことになっても、弟をもう一度受け入れることです。その差がどうアークを動かすかは欲求と必要のガイドに。

14. 能動的な主人公

主人公は、物語を動かす選択をします。降りかかることに反応するだけの主人公だと、脚本は出来事の羅列になります。

初稿のイネスは「無理」と言うだけです。能動的なイネスは逆提案をします。借金を返し終えるまで、今日から朝のシフトで働くこと。これでシーンを動かしているのは彼女です。直し方は受け身の主人公という落とし穴にあります。

15. キャラクターアーク

アークとは、主人公が最初のページから最後のページまでにどう変わるかです。ポジティブ、ネガティブ、フラットがあります。上のどのテクニックもアークを支えます。シーンごとに人物が一歩ずつ動くからです。

イネスは朝4時にドアに鍵をかけて映画を始め、サミに鍵を手渡して終えます。2つの画で描くポジティブなアークです。3種類のアークについてはキャラクターアーク入門を、それが脚本全体の形のどこに収まるかは三幕構成のガイドを読んでください。

箱書きの段階で使えるテクニック

日本では、シーンを書く前に箱書き(ハコ)で構成を固める書き手が多くいます。構成とキャラクターのテクニック(7から9、13から15)は、すでに箱書きの段階で効きます。発端、ミッドポイント、伏線と回収、アークを箱の上で確認しておけば、本文に入ってからの大きな手戻りが減ります。シーン、セリフ、ビジュアルのテクニックは、本文を書くときと直すときに使いましょう。

アウトラインのどこで管理するか

構成のテクニックは、目に見えるほうが扱いやすくなります。ScreenWeaverのScriptタブでは、脚本エディターの上にカードビューがあり、幕、シークエンス、ストーリービート、シーンの階層ごとに1列ずつ並びます。発端とミッドポイントをストーリービートのカードとして印をつければ、狙った位置にあるかをひと目で確かめられます。エディターとアウトラインは無料のScreenwriterプランに含まれます。紙派なら、壁に貼ったカードでも同じことができます。

書き直しチェックリスト

脚本全体にではなく、1シーンずつ使ってください。

  • シーンはあいさつのあとに始まり、別れの前に終わっているか?
  • 終わりに、少なくとも1人の立場が変わっているか?
  • 4行を超えるト書きはないか?あれば分ける。
  • 気持ちをそのまま言うセリフはないか?遠回しの言い方を探す。
  • 何か別のものが注意を引いているあいだに情報を渡しているか?
  • 役名を隠しても、誰が話しているかわかるか?
  • セリフなしのほうが効く瞬間はないか?
  • あとで効くものは、すべて前に仕込んであるか?
  • 主人公はこのシーンで選択をしているか、反応しているだけか?
  • このシーンで主人公のアークは一歩進んだか?

FAQ

いちばん大事な脚本テクニックは何ですか?

最初の書き直しなら、遅れて入り早く出る、サブテキスト、能動的な主人公から始めましょう。遅いシーン、言いすぎのセリフ、反応するだけの主人公という、最初に読んだときにいちばん見つけやすい問題に効きます。ミッドポイントのような構成のテクニックは、シーンが機能してから重要になります。

1つのシーンにいくつテクニックを使えばいいですか?

シーンが必要とするだけで、それ以上は使いません。2行のつなぎならプレラップだけで足りるかもしれません。重要な対決なら、遅れて入る、サブテキスト、立場の変化、伏線を同時に使うこともあります。必要のないテクニックを重ねると、作り物めいて見えます。

脚本テクニックと構成は同じものですか?

違います。構成は三幕や8つのシークエンスのような、物語全体の形です。テクニックはその形の中で使う道具です。発端やミッドポイントのように構成上のビートになるものもあれば、サブテキストや余白のように1行ずつ効くものもあります。

脚本テクニックはどう練習すればいいですか?

すでに書いたシーンを1つ選び、このガイドがパン屋のシーンでしたように、テクニックごとに1回ずつ書き直します。それから両方を声に出して読みます。たいてい1ページ以内で違いがはっきりわかります。

連続ドラマや短編にも使えますか?

使えます。シーンとセリフのテクニックは、どんな長さでも同じように働きます。構成のテクニックは規模を縮めて使います。短編にも発端と転換は必要で、それが数ページに収まるだけです。連続ドラマの1話は、遅れて入る形で組んだコールドオープンで始まることがよくあります。

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著者について

ScreenWeaver 編集チームは、経験を積んだ映画制作者、脚本家、技術者で構成されています。構想と制作のあいだの隔たりを埋めることに取り組んでいます。

映像技法

この記事に出てくる映画の技法

それぞれに短いクリップ、脚本の抜粋、ショットリストの書き方が付いています。

全263件の技法

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