ワイプ一つの場面が前の場面を払い去る
ワイプは線や図形を画面上に走らせ、前のカットを押し出しながら次のカットに入れ替える転換技法だ。観客に転換をあえて見せることで、物語に絵本のような、遊び心のあるリズムが生まれる。
別名ワイプトランジションワイプカットラインワイプ
編集とトランジション
スクリーン上で効く理由
ワイプは「一方その頃」を告げる合図だ。冒険活劇、連続活劇、コメディ、語り手の存在感が強い作品に合う。観客が場面から場面へ飛ぶことを楽しめる作品向きだ。マンガのページをめくる、あるいは絵の枠を滑らせるような感触がある。二つの場所を追うチェイスや、二人の恋人の一日を交互に見せるロマンスにも勢いを加えられる。作品全体が視覚的に作り込んだスタイルを受け入れていて、観客が場所から場所へ導かれる準備ができているとき、ワイプは効果を発揮する。リアリズム志向のドラマでは幻想を壊してしまうが、寓話やパルプ調の冒険活劇では、むしろ楽しみの一部になる。
ショットリストの一行
- サイズ
- ワイドショットまたはミディアムショット
- アングル
- 任意。高さを揃えることが多い
- movement
- ワイプの方向に合わせたカメラまたは被写体の動き
- レンズ
- 任意
- 尺
- ワイプ自体は0.5〜1.5秒
アウトの側のショットで、予定するワイプの方向と同じ方向に動きを配置しておくと、転換がその動きに導かれたように感じられる。
脚本
脚本上での書き方
ワイプは編集の技法であるため、脚本(スペック)にはほとんど書かれない。連続活劇やコミック調の冒険活劇へのオマージュだと明確に意図している場合は、最初の転換に一度だけ注記するか、「WIPE TO:」を控えめに使うことでトーンを示せる。それ以外は監督と編集に任せるべきだ。各ワイプの方向、形、速度はショットリストと編集メモに記し、フレーム内の動きと合わせて選ぶのがよい。
EXT. ジャングルの川 - 太平洋の島 - 1937年 - 昼
パイロットのルビー・ハロラン(30代、革ジャケット、頬に油汚れ)が、地図を歯で挟んだままカヌーを滝へ向けて漕いでいる。
WIPE TO:
INT. 港のバー - ポートモレスビー - 同時刻
悪役バロン・ケスラー(60代、白いリネンのスーツ)が、べたつくテーブルの上で同じ地図の残り半分を広げる。
KESSLER
彼女が必ず案内してくれる。それに違いない。
絵コンテ
絵コンテでの見せ方
二つのカットをそれぞれ描き、その間に対角線・縦線・円形などの線で分割した中間コマを描く。両側にそれぞれの画像の半分を配置する。線が進む方向を矢印で示す。WIPEとそのスタイル(ライン、クロック、スター、プッシュなど)、持続時間を書き込む。人物が画面外へ歩き去る、車が通過するなど、ワイプの動機となるフレーム内の動きも記しておく。
組み合わせると効く技法
左から右へのトラッキングショットの後、同じ方向へのワイプを重ねると、転換そのものがカメラが次の場所へ滑り込んでいくように感じられる。

ワイプでエスタブリッシングショットに入ると、物語がどこへ飛んだのかが観客に明確に伝わる。遊び心のあるワイプと、はっきりした場所の提示が組み合わさって働く。
参考作品
この技法が使われている作品
スター・ウォーズ (1977)
ジョージ・ルーカスは場面転換に線や図形のワイプを多用している。彼が愛した冒険活劇の連続活劇や黒澤映画へのオマージュだ。
隠し砦の三悪人 (1958)
黒澤明は場所や時間の飛躍にワイプを頻繁に使う。この手法をルーカスが後にスペースオペラで借用した。
ScreenWeaver
ScreenWeaverで設定する
脚本内に並行する場面を書けば、ScreenWeaverが自動的にショットへ分解する。絵コンテでは、アウトの側のショットにワイプを進めたい方向の動き(トラックやパンを右方向にするなど)を与え、インの側のショットに合わせたフレーミングとアングルを設定する。転換の前後は持続時間を短く保つ。人物やロケーションはショット間で引き継がれる。AIプレビジュアライゼーションでワイプの見え方を確認したうえで、ショットリストにそのスタイルを書き込むとよい。
無料で書き始めるこのクリップのプロンプト
これはページ上部のクリップをレンダリングした、そのままのプロンプトだ。カメラと光の記述は残し、主体と場所だけを変えればいい。
Wipe transition inside an abandoned train station: the first shot is a static wide view of a rusted platform with broken benches and scattered pigeons, dim gray daylight. A hard vertical line sweeps left to right across the frame at a steady pace over about one second, wiping the empty platform away with no fading. It reveals the second shot: the same station now lit by a shaft of warm light, dust motes drifting, an old clock frozen at the wrong hour on the far wall. The wipe edge stays sharp throughout. No text.
よくある間違い
- 01
トーンに合わないワイプ
シリアスなリアリズムドラマでのワイプは、ギャグのように見えてしまう。冒険活劇、コメディ、オマージュ作品など、視覚的な転換を受け入れる作風の場合にのみ使うこと。
- 02
方向がばらばら
左、上、斜め、と動きに根拠なくワイプの方向が変わると散漫に見える。フレーム内の動きに方向を合わせ、一貫したロジックを保つこと。
- 03
図形の使いすぎ
星、ハート、時計、ダイヤ形と混在させると、映画がスライドショーのようになってしまう。ワイプのスタイルは一つか二つに絞り、それを守ること。



