赤外線フィルム調見慣れた世界が異界になる
赤外線フィルム調は、人の目に見えない波長の光を記録する手法だ。葉や草が白やピンクに光り、空は暗く落ち、肌は蒼白で滑らかに写る。観客は場所を認識できても、その色彩には見覚えがない。見慣れた世界が一瞬で夢のような、異界のような、あるいは何かに取り憑かれたような気配を帯びる。
別名エアロクロームルック偽色赤外線ウッド効果IR写真インフラレッド
光学効果
スクリーン上で効く理由
見慣れた風景を見慣れないものに変えたいときに使う。赤外線は、登場人物の変容した意識状態、災害後の世界、新しい目で見た戦場、何かが歪んでいる楽園、あるいは故郷への夢を表現できる。異化効果、不穏さをまとった美しさ、政治的な批評、そして超常現象にも力を発揮する。観客が「見えているもの」そのものを疑うべき場面、そして風景や植物が画面の中心を占める場面でこそ、この手法は生きる。台詞が続く長い場面には向かない。顔の色が自然な色調を失ってしまうからだ。明確な理由がある場面だけに絞って使うこと。
ショットリストの一行
- サイズ
- ワイドショットまたはエクストリームワイドショット
- アングル
- アイレベルまたはやや高め
- movement
- 固定または緩やかなパン
- レンズ
- 24mmから35mm、コンバート機に赤外線パスフィルターを装着
- 尺
- 5秒から10秒
強い日差しの下、画面いっぱいに植物を入れて撮影すること。赤外線は可視光と異なる振る舞いをするため、フォーカスと露出は必ずテストする。
脚本
脚本上での書き方
スペック脚本にこの技法名を書き込んではいけない。世界が異様に見えるべきなら、キャラクターが見ているものを普通の物語言語で書く。「ジャングルがピンクに光っている」「正午なのに空が真っ黒だ」。これで監督は、現実から外れた映像であることを理解できる。カメラの選択までは指定しない。監督を務める場合は、コンバート機やフィルター、グレーディングをどう使うかをビジュアルノートに書き、実際のロケ地で必ずテストすること。
EXT. 紅茶農園、スリランカ - 正午
丘一面の茂みが、あり得ない淡いピンク色に光っている。
ニマリ(40代、農園監督、傘を閉じて腕に抱えている)が、三晩眠れぬまま段々畑を歩いていく。
彼女の頭上の空はほとんど黒い。太陽は真上にあるのに。
畝にかがみこむ摘み手たちは顔を上げない。
NIMALI
みんなの声はどこへ行ったの?
絵コンテ
絵コンテでの見せ方
まず風景を普通に描き、その上で葉や草、木など光る部分を薄い網掛けやピンクの鉛筆で示し、空は濃く暗く塗る。コマの脇に「赤外線、植物は白またはピンク、空はほぼ黒」と注記する。人物が入る場合は、その位置と肌の見え方も指定する。通常のカラーに戻すカットがあれば、その切り替わりを明確に示す。
組み合わせると効く技法

赤外線は風景を、顔よりもはるかに大きく変質させる。エクストリームワイドショットで植物と空を画面いっぱいに収めれば、異様な色彩は細部ではなく、世界そのものになる。

赤外線からモノクロへ、あるいはモノクロ赤外線そのものを使うと、光る植物の異様さを残しながら色彩を剥ぎ取り、世界を殺伐とした、幽鬼のような姿にできる。
参考作品
この技法が使われている作品
The Enclave (2013)
リチャード・モースはこのギャラリー作品を、既に生産終了した赤外線フィルムで撮影した。コンゴ東部の丘と戦闘員たちが、はっとするようなピンクとマゼンタで写っている。
私はキューバ (1964)
セルゲイ・ウルセフスキーは、椰子とサトウキビをモノクロ赤外線で撮影した。重く暗い空の下、葉が白く輝いている。
ScreenWeaver
ScreenWeaverで設定する
脚本に異様な風景を描写すれば、ScreenWeaverが自動でシーンをショットに分解する。各風景ショットを開き、ワイドまたはエクストリームワイドの画角、アイレベルかやや高めのアングル、固定または緩やかなパンの動き、5秒から10秒の長さを設定し、ショット説明に赤外線調である旨を書き加える。ロケーションや設定情報はショット間で引き継がれるため、同じ段々畑が一貫して再現される。AIプレビジュアライゼーションを使えば、実際のロケ地でテストする前にシーケンス全体を検討できる。
無料で書き始めるこのクリップのプロンプト
これはページ上部のクリップをレンダリングした、そのままのプロンプトだ。カメラと光の記述は残し、主体と場所だけを変えればいい。
Infrared film look, static wide shot of a vineyard in autumn at midday, rows of grapevines and a line of trees along the horizon. Near-infrared film stock renders every leaf and blade of grass glowing bright white and pale pink instead of green, while the clear sky above turns near-black with high contrast. A lone worker in a wide-brimmed hat walks slowly between the rows, skin rendered pale and waxy under the infrared exposure. Camera does not move, wind lightly stirs the glowing white foliage. No text.
よくある間違い
- 01
植物がない
赤外線は植物に強く反応する。コンクリートとガラスの都会の場面では変化がほとんどなく、ただ奇妙に見えるだけになる。木や草、田畑があるロケ地を選ぶこと。
- 02
顔の変化を見落とす
肌は蒼白で蝋のような質感になり、血管が浮き、瞳は暗く写る。早い段階で役者にテストを行い、それが物語に効いているのか、グレーディングで調整が必要かを判断すること。
- 03
フォーカスのずれ
赤外線は可視光とわずかに異なる位置に合焦する。特に開放絞りでは、目視ではなくモニターでフィルター越しのフォーカスを確認すること。




